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大阪家庭裁判所 昭和37年(家イ)869号 審判

本籍 鹿児島県 住所 大阪市

申立人 ヨハンナ・クゾリスこと山野ミネ子(仮名)

本籍 ギリシャ国 日本における最後の住所 大阪市

相手方 ウイリゲス・クゾリス(仮名)

住所 大阪市

相手方代理人 下山良子(仮名)

主文

申立人と相手方を離婚する。

本件調停費用は双方の各自負担とする。

理由

申立人は主文同旨の調停を求め、その事情として次のとおり述べた。

申立人と相手方(国籍ギリシャ国)は、昭和三四年一〇月二一日婚姻したが、船員である相手方は翌二二日申立人に無断でギリシャ船○○号で出航してしまい、以来日本に来ることもなく且つ申立人に対し離婚の意思も披瀝して申立人を遺棄しているので、相手方との離婚を求めるものである。

まず裁判籍ならびに管轄については、申立人が日本国籍を有し且つ日本の前記肩書地に住所を有し、さらに相手方に遺棄されている本件においては、日本の裁判所に裁判籍、当庁にその管轄があるものと解する。

筆頭者山野久義の戸籍謄本の記載、申立人、相手方代理人の審問結果、相手方の申立人宛西暦一九六二年(昭和三七年)二月一八日付手紙、白井正次の居住証明書を綜合すると、(1)相手方はギリシャ船の船員で昭和三三年八月頃以来三回日本に寄港したが、昭和三四年七月頃その第三回目の寄港の際数ヶ月間日本に滞在し、その間に申立人と大阪市港区○○通○丁目○○番地下山良子方で同棲生活を送り、昭和三四年一〇月二一日教会で結婚式を挙げ、同日神戸ギリシャ領事館および神戸市生田区役所に婚姻届出をなしたこと、(2)相手方は上記婚姻直後にも拘らず、昭和三四年一〇月二二日申立人に無断に神戸港よりギリシャ船○○号で出航し、以来日本に寄港しないこと、(3)相手方はも早申立人方に来る意思も申立人を呼び寄せる意思もなく、申立人に対しては離婚の意思を披瀝して、これを遺棄していること、(4)申立人はかかる状態に対し相手方との離婚を決意し、相手方代理人もこれに同意していること、がそれぞれ認められる。

以上認定の相手方遺棄の行為は、ギリシャ民法第一四四一条に該当し、且つ日本民法第七七〇条第一項第二号にも該当するので、法例第一六条、上記各法条、家事審判法第二四条第一項を適用して、主文のとおり審判する。

(家事審判官 西尾太郎)

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